オウム返しがある子との会話、どう広げる?―答えやすい聞き方と気持ちを確かめる関わり方
「何がほしい?」と聞くと、
「何がほしい?」と返ってくる。
「楽しかった?」と聞いても、
「楽しかった?」と同じ言葉を繰り返す。
お子さまと話しているときに、「どう聞けば答えやすいのだろう」「どんな気持ちなのかな」と感じることはありませんか。
そんなときは、聞き方を少し変えることや、言葉以外の返事にも目を向けることが、やり取りの手がかりになります。
今回は、日常の場面をもとに、答えやすい聞き方と気持ちを確かめる工夫を紹介します。
1.繰り返す言葉には、さまざまな背景があります
子どもは、周囲の人の言葉をまねしながら、言葉の意味や使い方を覚えていきます。日常では、相手の言葉を繰り返すことを「オウム返し」と呼びます。
大人の会話でも、「疲れたんだね」と相手の言葉を繰り返し、話を受け止めていることを伝える場合があります。
一方、発達や医療の文脈では、聞いた言葉をその場で、あるいは時間がたってから繰り返すことを「エコラリア」と呼びます。
繰り返す言葉の背景として考えられること
ことばに親しむ
聞いた言葉をまねしたり、響きやリズムを楽しんだりしている。
やり取りに参加する
知っている言葉を使って、相手に反応したり伝えようとしたりしている。
気持ちを落ち着ける
なじみのある言葉を繰り返すことが、安心につながっている。
答え方に迷う
質問の意味や、何をどう答えるかが分かりにくい可能性がある。
※これらは背景の例です。一つの発言だけで理由を判断することはできません。
「オウム返しは学習、エコラリアは自己刺激」と、目的をはっきり分けられるものではありません。
また、言葉を繰り返せることと、内容を十分に理解していることは同じではありません。その場の状況や行動も合わせて見ていくことが大切です。
2.「何がいい?」を、見て選べる聞き方に
自由に答える質問には、候補を思い浮かべ、言葉を選ぶ難しさがあります。答えが出にくいときは、実物や写真を見せてみましょう。
例:お絵描きの色を選ぶとき
言葉だけで聞くと…
答えを自分で思い浮かべることが難しいのかもしれません。
実物を見せてみる
赤と青の色鉛筆を見せる
大人:「赤だね」と受け止めます。
指さしや、手に取る行動も返事の一つです。言葉で答えなくても、希望が伝わればやり取りは成立しています。
二つから選ぶことが難しい場合は、一つずつ見せるなど調整しましょう。どちらも選ばないときは、別のものがよい、今はやりたくないという可能性も考えます。
3.言った言葉と、行動を合わせて確かめる
「赤と青、どっち?」に「青」と返ってきても、青を選んだのか、最後に聞いた言葉を繰り返したのか、分かりにくいことがあります。
「青」と答えたら、どう確かめる?
青を受け取って使う
「青だね」と受け止める。
赤に手を伸ばす
「赤だったね」と受け止め直す。
※反応が分かりにくいときや、どちらも選ばないときは、無理に決めずに待ちましょう。
一度言った答えにこだわらなくて大丈夫です。
選び直すことや、断ることも大切な意思表示です。
4.使える言葉を短く添え、少し待つ
伝えたいことが行動から分かっても、言葉が出にくいときには、その場面で使える短い表現を示してみましょう。
行動に合う言葉を添える例
開かない容器を差し出す
言葉を添えながら、容器を開けます。
困って教材を見せる
どこで困っているかを確かめ、手助けします。
すぐに同じ言葉を言えなくても、伝えようとした行動を受け止めます。「言えたら手伝う」という条件にする必要はありません。
また、質問したあとは、言葉を足しすぎずに少し待ってみましょう。考えている途中で聞き方が変わると、答えにくくなることがあります。
短く聞く → 待つ → 反応を見る
返事が出にくいときは、質問を重ねるよりも、実物や写真などの手がかりを足してみましょう。
5.会話を、質問と答えだけにしない
会話を広げようとすると、「これは何?」「何色?」と質問が多くなることがあります。
質問への返事が難しいときは、同じものを見ながら、大人が気づいたことを言葉にする方法もあります。
積み木で遊んでいるとき
毎回答えを求めなくても、同じ出来事を共有する時間をつくれます。同じものに注目し、反応を受け止め合うことも、大切なやり取りです。
6.気持ちは、決めつけずに確かめる
「嫌だった?」に「嫌だった?」と返ってきても、その言葉だけで気持ちを判断することは難しいでしょう。
課題の途中で手が止まった場合も、難しい、疲れた、やり方が分からないなど、いくつかの可能性があります。
手が止まったときの関わり方
または「少し休む?」
大人が「難しかったかな?」と気持ちを言葉にする場合も、それは仮の受け止めです。違う反応があれば、受け止め直しましょう。
気持ちを代弁することと、気持ちを決めつけることは分けて考えます。
7.「伝わった経験」に目を向ける
やり取りの変化は、オウム返しが減ったかどうかだけでは捉えられません。
こんな変化も、大切な一歩です
- ✓ 欲しいものを指さして知らせる
- ✓ 希望と違うものには首を振る
- ✓ 困ったときに教材を大人に見せる
- ✓ 場面に合う短い言葉で希望を伝える
繰り返す言葉があっても、自分で選ぶ、断る、助けを求めるといった伝え方が増えているかに目を向けてみましょう。
大人の想定した答えが出ることよりも、本人の希望や困りごとが相手に伝わることを大切にしていきます。
クラップでは、お子さまに合う伝え方を考えます
クラップでは、お子さまの言葉だけでなく、表情や行動、手がかりを示したときの反応にも目を向けています。
言葉だけで理解しやすいのか、実物や絵があると分かりやすいのか、返事までに時間が必要なのか。伝えやすい条件は、お子さまによって異なります。
個別支援では、ことばの理解と表出の両方を見ながら、必要に応じて、短い言葉の見本や視覚的な手がかり、援助を求める表現などの支援を検討します。
今ある言葉や身振りを受け止めながら、「伝わった」「自分で選べた」「手伝ってもらえた」という経験を、日常のやり取りにつなげていきたいと考えています。
お子さまのことばやコミュニケーションについて、ご相談ください
クラップでは、見学・ご相談を受け付けています。お子さまに合う関わり方や支援について、一緒に考えていきます。


